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非アルコール性脂肪肝疾患について

人間ドックの異常項目で最も多いのが肝機能障害であり,そのほとんどが脂肪肝もしくはお酒の飲み過ぎよるものです.肝細胞内に中性脂肪(トリグリセリド)が過剰に蓄積した状態が脂肪肝ですが,非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は,明らかな飲酒歴がなく1主にメタボリック症候群に関連する諸因子(肥満, 糖尿病, 脂質異常症など)とともに, 組織診断あるいは画像診断(腹部超音波検査やCTMRIなど)にて脂肪肝を認めた病態です.NAFLDには,病態がほとんど進行しない非アルコール性脂肪肝(NAFL)と進行性で肝硬変症や肝臓癌の発症母地となる非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)があり,我が国では NAFLが約2,300万人,NASH370万人存在していると推定されています.

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように,NAFLNASHではほとんど症状が出現することはなく,肝硬変症まで進行すると全身倦怠感や浮腫,黄疸などの様々な症状がみられるようになります. NAFLDの原因は,肥満, 糖尿病, 脂質異常症,運動不足などですので,肥満の解消のために食事療法と運動療法によるダイエット,糖尿病や脂質異常症がある人は良好なコントロールが必要です.健診や人間ドックで肝機能異常を指摘されても放置している労働者は多いと思いますが,NASHのように進行性の脂肪肝もありますので一度は消化器科を受診してきちんと診断をしてもらうことをお勧めいたします.


※1明らかな飲酒歴とは,純アルコールで男性30g/日以上,女性20g/日以上の飲酒量を指します.明らかな飲酒歴によりアルコール性肝障害を発症するためNAFLDの飲酒量はそれ未満になります.


by hrnnobu357 | 2021-12-01 17:26  

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