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うつ病と適応障害について

うつ病とは, 強いうつ状態が長く続き日常生活に支障をきたしてしまう病気のことです.(うつ状態とは, 物事に対する関心や取り組む意欲が失せて何もする気が起こらない状態が1日中ずっと, ほとんど毎日, 2週間以上にわたって続いた状態のこと)うつ病の原因や発症のメカニズムは未だ解明されていませんが, 脳内の感情をコントロールする神経伝達物質のバランスが崩れることや大脳皮質前頭前野の血流低下などが原因として考えられています.また, 元々の性格や考え方の傾向, 環境なども関係していると言われています.

一方,適応障害とは, 職場や学校, 家庭などで起こるストレスによって, 憂うつな気分になったり, 不安を感じたりすることが続き, 日常生活や社会生活に支障をきたす病気です.日常生活でのさまざまな出来事や環境に対してうまく適応できず, それがストレスとなり, 心身にさまざまな症状が表れます. 通常, ストレスは誰にでも感じるものですが, 適応障害の場合はストレスによって症状が強く出現し,その症状によって日常生活や社会生活を送ることが難しくなってしまいます.

両者とも,精神的症状として抑うつ気分, 不安感, 無気力など,身体的症状として不眠, 倦怠感, 食欲不振, 頭痛などが認められます.

治療は,うつ病では「休養」と「薬物療法」が基本ですが,治療をするためには正確な診断が必要であり専門医による診断が不可欠です.適応障害は原因であるストレスの排除やストレスに対処できるようにすることが基本となりますが,不眠, 気分の落ち込み, 不安感などの症状に対し補助的に薬物療法も行われます.

労働者においては,長時間労働や職場人間関係などが両疾患のリスクとなります.企業は,労働者の精神的・身体的ストレスをもたらさない快適な職場環境づくりを推進することが必要です.また,労働者自身も生活習慣の改善(規則正しい生活と食事, 適度な運動, 十分な睡眠, 禁煙 ),援助資源を持つ(仲間や相談できる人を持つ, 出かける, 引きこもらない),自己信頼感を強める(責めない, 比べない, 焦らないなどの考え方を持つ)などを心がけるようにしましょう.


<うつ病などの精神・身体疾患の多い職場環境>

□長時間労働が常態化

□休日出勤が多く休みが思うように取れない

□慢性的に人手が足りない

□仕事の納期にゆとりがなく厳しい

□仕事に終わりが見えない

□自分の能力以上の高い成果を要求される

□上司の理解・協力がない

□社内の人間関係が希薄

□地位の変化に不安

□雇用の安定性に不安

□ハラスメントがある など


# by hrnnobu357 | 2024-03-01 06:54  

全国生活習慣病予防月間について

毎年2月は全国生活習慣病予防月間です.

生活習慣病は,偏った食事運動不足喫煙過度の飲酒過度のストレスなど好ましくない習慣や環境が積み重なると発症する疾患です.生活習慣病の代表がメタボリック症候群で内臓脂肪が蓄積することが原因で発症するため内臓脂肪症候群と呼ばれています.内臓脂肪型の肥満になると脂肪細胞から体にとって不都合なホルモンが分泌され,高血圧症,糖尿病,脂質異常症といった生活習慣病を引き起こします.その結果,動脈硬化症が進行し最終的には脳卒中や心筋梗塞といった命にかかわる重大な疾患の発症につながります.メタボリック症候群を予防・解消するためには,その原因である内臓脂肪を蓄積しないように,また,減少させるように努力をする必要があります.基本は食生活の改善になりますが,内蔵脂肪は皮下脂肪に比べて燃焼しやすいという特徴もありますので,積極的に運動(特に有酸素運動)を行うことも大切です.また,十分な睡眠,節度ある飲酒,喫煙者は禁煙,ストレスを避けることなど心がけることが大切です.「ブレスローの7つの健康習慣」を参考に生活習慣を見直し,予防と治療に前向きに取り組みましょう.

健康的に働くためには心と身体の健康づくりが大切です.「健全なる精神は健全なる身体に宿る」と言われるように,まずは健康的な身体づくりを心がけましょう.

 

 

<ブレスローの7つの健康習慣>

① 喫煙をしない

② 定期的に運動をする

③ 飲酒は適量を守るか飲まない

 178時間の睡眠をとる

⑤ 適正体重を維持する

⑥ 朝食を食べる

⑦ 間食をしない


# by hrnnobu357 | 2024-02-19 06:25  

がん検診について

日本人の死因で最も多いのが「がん」です.全体の4分の1を占め,日本人の2人に1人は「がん」になります.

がんの部位別死亡率は肺がんが最も多く全体の約25%を占め,大腸がん,胃がん,膵臓がんと続きます.男女別の罹患数では,男性は前立腺がん,大腸がん.胃がん,肺がん,女性は乳がん,大腸がん,肺がん,胃がんの順で多くなっており,男女別の部位別死亡数では,男性は肺がん,大腸がん.胃がん,肺がん,女性は大腸がん,肺がん,膵臓がんの順で多くなっています.

がん検診には,集団の死亡率を減少させることを目的とした市区町村が行う住民検診や職場での職域健診が該当する対策型健診と個人が自分の死亡リスクを下げるために受ける人間ドックなどの任意型健診があります.

国が推奨するがん検診は肺がん検診,大腸がん検診,胃がん検診,子宮頸がん検診,乳がん検診の5種類で死亡率の低下が認められた健診です.これらの5つのがんは,早期発見で治療できれば5年後に8割以上の確率で生存が可能です.我が国のがん検診受診率は諸外国に比べて非常に低い現状です.積極的にがん検診を受診しましょう.


下記はがんを防ぐための新12ヵ条 (参考:公益財団法人がん研究振興財団)


1条:喫煙をしない

2条:他人のタバコの煙を避ける

3条:お酒はほどほどに(純アルコール20g/)

4条:バランスのとれた食生活を5条:塩辛い食品は控えめに(男性8g未満/, 女性7g未満/)

6条:野菜や果物は不足にならないように

7条:適度に運動

8条:適切な体重維持(BMI:中高年男性21~27, 中高年女性21~25)

9条:ウィルスや細菌の感染予防と治療

   (肝炎ウィルス, ピロリ菌, ヒトパピローマウィルスなど)

10条:定期的ながん検診を

11条:身体の異常に気づいたらすぐに受診を

12条:正しいがん情報でがんを知ることから


# by hrnnobu357 | 2024-01-04 12:41  

新年のご挨拶

あけましておめでとうございます.

今年もよろしくお願い申し上げます.

臨床医として地域医療,健診医として予防医学,産業医として労働衛生の向上に微力ながら努力していく所存でございます.ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます.


# by hrnnobu357 | 2024-01-01 07:45  

令和5年度 年末年始無災害運動と冬季に注意したい労働衛生について

今年も『健康と安全で 幸せつなぐ年末年始』の標語のもと,1215日から来年115日まで「年末年始無災害運動」が実施されます.年末年始は寒さに加え慌ただしい時期でもあり,各職場で災害が起きやすい状況にあります.特に,非定常作業は,急な作業,慣れない作業,いつもと違う作業となることから十分に注意が必要です.また,冬季は感染症に罹患しやすい時期,そして,積雪や凍結による交通災害や転倒災害が増加する時期でもあり対策推進が必要です.

この時期に事業場が行うべき事項として,安全衛生管理体制の充実,安全衛生教育の実施,自主的安全衛生活動の実施等が挙げられます.冬の労働災害を念頭においた安全パトロール,火気管理の徹底,交通労働災害防止対策の推進,転倒防止対策,腰痛対策,新型コロナウィルス感染症やインフルエンザ・ノロウィルス等感染予防対策の徹底,メンタルヘルス・過重労働対策の推進,生活習慣に関する健康指導などを実施しましょう.


# by hrnnobu357 | 2023-12-01 07:09